FILM & MOTION
音楽から、もう一度ジブリに出会う。
映画を思い出すとき、私たちは何を思い浮かべるでしょうか。
登場人物や風景、忘れられない台詞。そして、それと同じくらい記憶の奥深くに残っているものが「音楽」なのかもしれません。
幼い頃に観た映画のことは細部まで覚えていなくても、ある曲を耳にした瞬間、そのとき見ていた景色や、一緒にいた人、その頃の自分まで不思議と思い出すことがあります。
01 「ジブリを音楽から辿る」制作の裏側 「ジブリを音楽から辿る」制作の裏側
そんな「音楽から作品をもう一度辿ってみる」という発想から生まれたのが、WADIM SHOW 第1回企画「ジブリを音楽から辿る」です。
今回お迎えしたのは、『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」を作曲・歌唱し、『ハウルの動く城』の主題歌「世界の約束」も手掛けた木村弓さん。企画では楽曲を演奏していただくだけではなく、木村さんとスタジオジブリ作品との出会い、楽曲が生まれるまでの背景、そして音楽に込められた思いまでお話を伺うことにしました。
02 「歌を聴く」だけではなく、その背景まで辿りたかった。 「歌を聴く」だけではなく、その背景まで辿りたかった。
企画を考えるうえで大切にしたのは、単なるカバー映像や音楽番組にはしないことでした。
「いつも何度でも」は、多くの人が一度は耳にしたことのある楽曲です。だからこそ私たちが知りたかったのは、その曲がどのように生まれ、どんな時間を経て『千と千尋の神隠し』へ辿り着いたのかということでした。
対談の構成を考えていく中で、まず軸になったのが「木村さんとジブリとの出会い」。木村さんが『もののけ姫』に心を動かされたことから始まり、宮崎駿監督へ自身の楽曲を送ったこと、そこから文通が始まっていったこと。そして、後に「いつも何度でも」となる楽曲が生まれていくまで。
私たちが普段何気なく耳にしている一曲の向こう側には、作品だけを観ていては知ることのできない、人と人との出会いや長い時間がありました。
03 一曲の裏側にある「物語」をどう映像にするか。 一曲の裏側にある「物語」をどう映像にするか。
打ち合わせを重ねながら、対談の内容は少しずつ具体的になっていきました。
楽曲が生まれた経緯だけでなく、歌詞に込められた考え方や、制作当時の記録、そして「いつも何度でも」という言葉が何を伝えようとしているのか。木村さん自身の言葉で語っていただくからこそ、この映像には価値があると考えました。
台本の中でも、楽曲が当初別の作品のためにつくられていたこと、その後時間を経て『千と千尋の神隠し』へとつながっていった経緯、さらにタイトルである「いつも何度でも」に込められた思いまで、対談の大きなテーマとして設定しています。
完成した映像が約34分という長さになったのも、情報を短く切り取るのではなく、一つの楽曲が生まれるまでの時間そのものを残したかったからです。
04 2021年12月1日、撮影当日。 2021年12月1日、撮影当日。
撮影は2021年12月1日に行いました。公開された「いつも何度でも」の映像にも、この日の演奏が収録されています。
会場へ向かう車の中から、雨上がりの空に大きな虹が見えました。これからジブリの音楽を辿る一日が始まると思うと、その景色まで物語のワンシーンのようで、撮影が始まる前から、もうジブリの世界に入っていたのかもしれません。
撮影で目指したのは、何か大きな演出を加えることではなく、木村さんの歌声やライアーの音色、その場に流れる空気をできる限りまっすぐ映像に残すことでした。
話を伺う対談パートと、音楽そのものに向き合う演奏パート。同じ一日の撮影でありながら、それぞれ違うアプローチで木村さんを映していきました。
05 カメラの前で響いた「いつも何度でも」。 カメラの前で響いた「いつも何度でも」。
そして対談とは別に、「いつも何度でも」と「世界の約束」の演奏も撮影しました。
インタビューで楽曲の背景を知ったあとに、改めてその歌を聴く。同じ曲であっても、そこに込められた時間や思いを知ることで、聴こえ方は少し変わってくるように感じます。
「音楽から作品を辿る」という企画タイトルには、そんな体験を映像を通してつくりたいという意図もありました。
06 これからジブリに出会う人たちにも。 これからジブリに出会う人たちにも。
この企画の最後に、私たちはこんな思いを台本に記していました。
ジブリをもともと好きな人はもちろん、これから作品に出会う人たち、そしてもっと若い子どもたちの人生にも、ジブリがあってほしい。そして、この映像がそのきっかけのひとつになればいい。それが「ジブリを音楽から辿る」という企画の根底にあった思いです。
木村さん直筆のサインには、「いつも心踊る夢を!」という言葉が記されています。これから作品や音楽に出会う人たちにも、いつも心が踊るような夢を持っていてほしい。そんな木村さんの想いが込められた一枚です。
作品そのものをつくったわけではない私たちだからこそできるのは、作品を愛する一人として、そこに関わった人の言葉や音楽を丁寧に記録し、次の誰かへ手渡していくことなのかもしれません。
映像をつくることは、何か新しいものを生み出すだけではありません。すでに存在している素晴らしいものに、もう一度光を当てることも、私たちが考えるクリエイティブのひとつです。